Orchestra "Do Svidanya"

おーけすとら・だすびだーにゃ ほーむぺーじ

第20回定期演奏会

第20回チラシ
オーケストラ・ダスビダーニャ 第20回定期演奏会
日  時:2013年3月3日(日)13:00開場 14:00開演
会  場:すみだトリフォニーホール大ホール
JR総武線「錦糸町駅」北口より徒歩5分
東京メトロ半蔵門線「錦糸町駅」3番出口より徒歩7分
アクセス(すみだトリフォニーホール)
席  料全席指定 2,000円
演奏曲目:D.ショスタコーヴィチ作曲
バレエ組曲より抜粋(ワルツ、ギャロップ、etc.…)
交響曲第4番 作品43
演  奏:オーケストラ・ダスビダーニャ
指  揮:長田 雅人
未就学児のお子様は客席にお入りになれません。託児室をご利用下さいませ。
なお、託児室および車椅子エリアには限りがございます。必ず事前に事務局へお問い合わせ下さいますようお願い申し上げます。
お問い合わせ順にお答えし、定員に達し次第締め切りとさせて頂きます。
安全面からも定員を超えてお受けすることは一切出来ません。
なにとぞご了承下さいませ。
【お問い合わせ】オーケストラ・ダスビダーニャ事務局
090−4609−7752 info@dasubi.org

チケットについて

今公演のチケット販売は、終了いたしております。
ありがとうございました。

団長挨拶〜交響曲「ダイナマイト発明者の告白」〜

日本人医学者、山中伸弥先生のノーベル賞受賞で話題となったiPS細胞:「様々な細胞に分化する万能細胞の一種。同じ万能細胞であるES細胞とちがって、受精卵ーーつまり将来の命ーーを使用しないので、倫理的な問題がクリアされたと言われる。が、iPS細胞から精子や卵子も作れてしまうため、新たな倫理問題を生む。」

技術の進歩は、常に倫理の問題と不可分な関係にあり続けてきました。この20年で大きな進歩を遂げてきたインターネットも、ボタン操作だけでお金を盗んだり他人を騙したりできてしまう世の中を作りました。
時をさかのぼれば、元々は獲物を射て食糧を得るための弓矢が人間に向けて放たれるようになり、やがて、より多く、より確実に成果を上げるための大量殺りく兵器へと発展しました。
「人間を幸せにする技術」は、即ち「人間を不幸にする技術」でもあり、要はその技術を利用する人間サイドの倫理が分かれ道になります。技術そのものに罪はありません。
そして、新しい技術が開発される度にすかさず倫理問題を提起する人ーー開発者自身の場合もあれば、別人の場合もありますがーーは、何かしらの「不安」を感じているのだと思います。
…本当にこれでいいんだろうか?

そして、「開発と倫理」は、理系技術に限った話ではありません。
社会制度や国家体制といった文系科学についても妥当すると思います。
約100年前に初めて地球上に成立した社会主義国家、ソヴィエト。
その体制の目指したものは、貧しい労働者たちを資本家による酷使と搾取から解放し、全ての労働者が豊かで幸せである社会。
貧富の差を拡大させ、「金持ちたちだけの自由」を生んだ放任的な資本主義体制からすれば、社会主義という新体制は大きな「統治技術の開発」だったと言えるのかも知れません。
でも、多くのロシア人が「自由で豊かな世の中はすぐそこまで来ている」と信じていた頃に、わずかながら「本当にそうなんだろうか?このまま新体制を信じていいんだろうか?」と不安を感じていた人たちもいたことでしょう。
ショスタコーヴィチも、そんな不安を抱いていた一人だったと思われます。

1917年のロシア革命によって成立した社会主義国家ソヴィエトは、共産党の一党支配体制を進め、やがて党書記長のスターリンによる独裁の時代を迎えます。「理想的な社会主義国家ソヴィエト」をPRしない芸術家への厳しい弾圧も始まりました。
ショスタコーヴィチもスターリンから名指しで公的批判を浴びますが、ちょうどその頃に書かれた第4交響曲は、難解で重苦しく、大編成のオーケストラによる強烈な破壊音と寒々しい静寂が交互に繰り返されます。
交響曲は初演を目前にして突然作曲者によって取り下げられ、その後25年もの間お蔵入となりました。初演中止の理由については諸説あるようですが、もし、「楽園国家ソヴィエト」のカケラも聞こえてこないこの交響曲が演奏されていれば、ショスタコーヴィチの人生はわずか30年で幕を降ろしていたかも知れません。

もう1曲の「バレエ組曲」は、第4交響曲の数年前に書かれたいくつかのバレエ音楽のナンバーから、ショスタコーヴィチや親しい音楽 家L.アトヴミャーンによってランダムに抜粋されて編まれた組曲です。ショスタコーヴィチの「バレエ組曲」には、『黄金時代』や『ボルト』といった1つのバレエ音楽だけからチョイスされた組曲の他に、『明るい小川』、『人間喜劇』等のいろんな舞台音楽や小品から広く選ばれたタイトル無し・番号付きの組曲が5曲あります。
今回は、その5つのタイトル無しバレエ組曲から、更に私たちが独自に7曲を選んだ「ダスビ・オリジナル版」を演奏します。
ワルツ、ポルカ、エレジー、ギャロップ…。これらは、映画館でBGMの即興演奏のアルバイトをして学費を稼いでいたショスタコーヴィチならではの躍動感やウィットに富んでいます。でも、スターリンの打ち出した「社会主義リアリズム」の基準からすれば、「労働者に分かりやすい民謡調でない、堕落した西洋志向」として問題視され、バレエの上演はすぐに打ち切られました。そんなバレエ音楽からタイトル無しの組曲を5つも編んだのは、ショスタコーヴィチ自身がお気に入りのナンバーの数々をなんとかコンサートの舞台に乗せたいと思ったからではないでしょうか。なので、魅力的でないはずがありません。聴いた瞬間に惚れます!
私たちも、時間(と体力)さえ許せば全曲演奏したいところを、泣く泣く、身を削る思いで、7曲に絞りました(ToT)

さて、「技術開発と倫理」の話に戻りましょう。
ダイナマイトの発明者ノーベルは、自分の研究が時には平和を脅かすことにもなるという自責から、「ノーベル賞」を創設したとも言われています。そして、彼が最も重視していたのは「平和賞」だったとも。
また、物質の持つ莫大なエネルギーを発見したアインシュタインは、世界大戦の折り、自身がユダヤ人だったということもあって、ヒトラーの蛮行を止められるならと原爆の開発に手を貸しました。そこには、アインシュタインの深い深い葛藤があったようです。 そして今は、安定した電力供給に平和利用されるはずの原子力が、人々の生活を破壊してしまっています。
ショスタコーヴィチの第4番は、目先の豊かさだけを追い求めていないか、倫理を忘れていないか、今なお不安の声を挙げているように思います。
…本当にこれでいいんだろうか?

3月3日、世間はひな祭の催し物で賑わっていることと思いますが、最先端技術=スカイツリーのお膝元、錦糸町にてちょっと頭を抱え込んだコンサートもいかがでしょう?お待ちしております。

2012年秋  オーケストラ・ダスビダーニャ 団長 白川悟志