
概要
日時:2015年2月8日(日)13:00開場 14:00開演
会場:東京芸術劇場大ホール
指揮:長田 雅人
プログラム
- D.ショスタコーヴィチ作曲
- 交響詩『十月』作品131
- 映画音楽『ニュー・バビロン』作品18 より抜粋
- 交響曲第8番 作品65
団長挨拶〜大震災、原発事故、土砂崩れ、噴火…を体験した私たちのための「実用的田園交響曲」〜
団長挨拶〜大震災、原発事故、土砂崩れ、噴火…を体験した私たちのための「実用的田園交響曲」〜
序)私たちオーケストラ・ダスビダーニャは、1993年の第1回コンサート以来20余年、常任指揮者の長田雅人と共に、旧ソヴィエトの偉大な…偉大すぎる作曲家、ショスタコーヴィチを一途に演奏してまいりました。
「ダスビダーニャ(Досвидания)」とは、ロシア語で「また会いましょう」という意味です。
1)第二次世界大戦の只中で書かれた交響曲第8番ーーショスタコーヴィチが大好きな人にとっても苦手な人にとっても、まさにこんな曲
が大好き/大嫌いという典型的な「ショスタコ音楽」でしょう。
第1楽章は、重々しくて暗くて、長たらしくて、破壊的な不協和音がこれでもかと耳に襲いかかってきます。狂気じみて、追い立てられるような第2と第3楽章。暗い雪原に一人放り出されたような第4楽章。そして、「明るく華やかなフィナーレ」の期待を完全に裏切り、掴み所なく尻すぼんで消えてゆく終楽章…。
こんな第8交響曲を、私たちダスビダーニャは今回で3度取り上げることになります。1994年の第2回定期、2006年の第13回定期、そして2015年の今回と、ほぼ10年に一度の取組となりました。
21年前、初めて第8を演奏したときは、とにかく全曲を止まらずに演奏することに精一杯で、曲に何かを込めて表現するというには程遠い結果となりました。
9年前の2度目の演奏の際は、選曲の段階から大きな変化を感じました。それまでの選曲会議では、各メンバーの推す曲が十人十色でなかなか決定に至らなかったのですが、この回は、多くのメンバーが「8番を演奏したい」と思っていたらしく、すぐに決まりました。
選曲会議の少し前に、多くの方が犠牲になられたJR福知山線の脱線事故があったのですが、この事故が第8の選出に少なからず影響したのではないかと感じておりました。演奏のほうは、「事故の悲惨さ、犠牲者の無念」といった想いの込もったダスビなりの第8を表現できたのではないかと自負しております。
それから9年後の3度目ですが、大震災と巨大津波、原発事故と離郷を体験し、モンスター台風と土砂崩れを体験し、火山の噴火を体験
した直後の選曲・演奏となります。
2)先程、この交響曲のフィナーレについて「掴み所なく尻すぼんで消える」と書きました。私自身、この曲の演奏を重ねるうちに、前半楽章の破壊的なショスタコ・サウンドだけでなく、フィナーレの不思議な音楽にも、この作曲家にしか創れない音の世界を感じるようになりました。その音楽をあえて言葉にするなら、“実用的田園交響曲”…でしょうか。
終楽章全体に漂うコミカルな躍動感を、あるロシアの指揮者が「瓦礫の下からたくさんの赤ん坊が這い出してきて、瓦礫で新しい町を作る様」と表現しました。私は、3・11大震災後の瓦礫撤去のボランティアに参加しましたが、生の瓦礫の山を見た時の締め付けられるような嫌悪感は忘れられるものではありません。
私の見た実際の瓦礫の下から元気な赤ん坊たちが這い出てくるシーンを思い浮かべると、第8の終楽章の音楽がそのシーンのBGMとして自然に頭の中で鳴り始めます。
「瓦礫」…過去の犠牲者に想いを馳せつつ、「赤ん坊」…未来に向けて再建してゆく希望の新都市のジオラマが、ショスタコーヴィチ特有のユーモアと優しさによって一つのサウンドの中に組み立てられているように感じられます。
生の惨劇を体験したからこそ求められ、実効性を持つ本物のヒーリング・ミュージック、“実用的田園交響曲”こそが、好きも嫌いもショスタコーヴィチの顔と評される交響曲第8番。
…そう思うに至りました。
3)そんなショスタコーヴィチの「田園」の前座を務めますのは、ショスタコーヴィチが苦手な人にも「これなら聴ける(^-^)」と感じていただけるであろうステキな2曲です。
交響詩『十月』は、ロシア革命の第2段階である「十月革命」からタイトリングされてはおりますが、特に革命の史実を音楽で表現した作品ではありません。
ショスタコーヴィチが、若かりし頃の自分が書いたメロディーを元に即興的に書き上げた、むしろ自分史的要素の強い小品です。
さすが、お気に入りのメロディーに触発されて衝動書きしただけあって、どこまでもかっこ良くて情熱的です。
映画音楽『ニュー・バビロン』は、パリ・コミューンをテーマにした国策映画のために書かれはしたものの、映画の内容とはかけ離れた明るさ、軽快さが前面に押し出されており、BGMとしては不採用となったイワク付。
1管編成(管楽器が各1本ずつ)で書かれていますが、その分色彩豊かで、ショスタコーヴィチの「オーケストレーション職人」
としての一面を伺わせます。
繰り出される各メロディーもウィットに富んでいて、特に「フレンチ・カンカン」のパロディーには思わず(^〜^)
結)ショスタコーヴィチのお好きな方はもちろん、敬遠されている方もちょっと覗きにいらっしゃいませんか。写真の中ではいつもしか
めっ面のショスタコさんですが、実は笑顔の素敵な人なんですよ。
2月8日(日)、今回は池袋、瓦礫から…ではありませんが、改築されてより快適になった東京芸術劇場でお待ちいたしております。
2014年秋
オーケストラ・ダスビダーニャ団長 白川悟志
